犬の腸閉塞:命に関わる緊急事態の見分け方と対処法
犬の腸閉塞は、飼い主が直面する可能性のある最も深刻な緊急医療のひとつです。腸閉塞(腸の閉塞)は、消化管を食べ物や液体、栄養が通過できなくなることで発生します。警告サイン、原因、治療選択肢を理解することは、愛犬の命を救うことにつながります。
獣医による迅速な処置がなければ、腸閉塞は3〜7日で致命的になることがあります。閉塞によって水分や栄養の吸収が阻まれ、脱水や電解質異常が急速に進行します。さらに、閉塞部位にかかる圧力により腸壁が損傷し、組織壊死や腸管破裂に至る危険もあります。本ガイドでは、症状の見分け方、治療の流れ、予防策について詳しく説明します。
犬の腸閉塞の原因を理解する
犬の腸閉塞は、獣医が一般に「機械的閉塞」と「機能的閉塞」に分類するさまざまな原因で起こります。機械的閉塞で最も多いのは異物誤飲で、特に好奇心旺盛で何でも噛んで飲み込んでしまう若い犬に多く見られます。
よくある異物による閉塞
腸閉塞を引き起こす物は意外と多岐にわたります。代表的なものには骨、ボール、おもちゃ、石、下着や靴下といった衣類、果実の種、タンポン、紐などがあります。これらが腸内で詰まると、消化や排泄の流れが物理的に遮断されます。
閉塞を引き起こす病的原因
異物以外にも、腫瘍や塊(特に高齢犬で多い)、腸管が狭くなる狭窄、瘢痕組織による癒着、腸重積(腸の一部が別の部分に入り込む)、寄生虫の大量寄生、ヘルニア、腸の捻転、重度の炎症性疾患などが腸閉塞を引き起こすことがあります。
腸閉塞の警告サインを見極める
腸閉塞の症状を早期に見つけることは、治療の成功にとって重要です。症状の重さや現れ方は閉塞の位置によって異なり、胃に近い位置での閉塞はより早く重篤な症状を引き起こす傾向があります。
主な注視ポイント
持続的な嘔吐は犬の腸閉塞で最も重要な警告サインの一つです。閉塞があると排便ができないまま嘔吐を繰り返すことが多く、これは消化の流れが阻害されている明確なサインです。嘔吐に伴って食欲が低下するのも一般的です。
腹部の痛みも重要な症状で、腹部が張って固く触れる、触られると痛がる、場合によっては攻撃的になることもあります。他の症状としては脱力、元気消失、排便困難(力んでも便が出ない)、体重減少、脱水、落ち着きのなさ、過度の鳴き声などが挙げられます。
行動の変化や身体所見
腸閉塞の犬は行動の変化が目立ちます。落ち着かず居場所を変え続けたり、抱き上げられたり触られたりすることに対して普段と違う攻撃的な反応を示すことがあります。診察では粘膜の乾燥、眼の落ち込み、皮膚弾性の低下など脱水の兆候が見られることがあります。嘔吐が続き排便が全くない場合は、直ちに獣医に連絡するべき強い兆候です。
腸閉塞の診断手順
獣医は複数の診断手段を用いて閉塞の位置や重症度を評価します。診断はまず問診と全身検査から始まり、症状の発現時期や経過を確認します。
触診と身体検査
初診時には腹部の触診で異常な塊、圧痛、腹部膨満を確認します。この触診で異物や異常部位を検出できる場合があります。獣医はまた全身状態を評価し、脱水や痛みの反応、バイタルサインの異常を調べます。
画像検査などの精密検査
腹部X線は腸閉塞の検出における主要な検査です。X線で異物の位置、ガスのたまり方、腸の拡張などを確認できます。超音波検査は軟部組織の詳細を示し、閉塞の正確な位置や性状の把握に有用です。
場合によっては造影X線(経口で造影剤を投与して消化管の流れを可視化する検査)を推奨されることがあります。血液検査は脱水や電解質異常、炎症の有無など全身状態を評価するために行われます。
腸閉塞の治療方法
腸閉塞の治療は、閉塞物の大きさ・位置・性質や犬の全身状態によって異なります。獣医チームは診断結果と緊急度に基づいて最適な治療方針を決定します。
非外科的治療
誤飲から比較的短時間で来院した場合、獣医は嘔吐を誘発して異物を吐き出させることを試みることがあります。これは飲み込んでから30分〜2時間以内に行うのが最も効果的です。内視鏡は外科手術を行わずに閉塞部位を観察し、専用器具で異物を回収できる場合があります。
完全閉塞を起こしていない小さな異物は、支持療法のもとで自然に排出されることがあります。この期間、点滴による補液や制吐薬、鎮痛薬の投与(例:Cerenia(セレニア)やファモチジンなど)で症状を管理します。
外科的治療
非外科的手段が効果がない、または不適切な場合は手術が必要です。手術では閉塞部付近の切開から腸内の異物を除去するか、閉塞の原因を直接処置します。長時間の圧迫や血流障害で腸組織が損傷している場合は、損傷した腸管の切除が必要になることもあります。
手術前には多くの場合入院して状態を安定させるための補液や痛み・嘔吐の管理を行います。術前処置によって手術リスクを低減し、回復を助けます。
術後ケアと回復
腸閉塞手術からの回復には慎重な観察と適切なケアが必要です。多くの犬は術後1〜2日間の入院管理が必要で、合併症の有無や回復の進行を確認します。
術直後のケア
初期回復期には点滴による補液、鎮痛薬、感染予防のための抗生物質投与が続けられます。獣医スタッフはバイタルサインや切開部の状態、全身状態を綿密に監視します。傷を舐めたり噛んだりして感染や治癒遅延を招かないよう、エリザベスカラーや術後服を着用させることが一般的です。
自宅でのケアと長期回復
退院後は通常10〜14日間の安静が必要です。運動制限、ジャンプや激しい遊びの禁止、静かな環境の維持などが求められます。回復期には消化に負担をかけない消化器用の食事や、獣医が推奨する消化にやさしい食事に切り替えることが多いです。
飼い主は毎日切開部を観察し、赤み・腫れ・分泌物・異臭など感染の兆候がないか確認する必要があります。定期的な再診で治癒経過を確認し、問題があれば速やかに対応します。
腸閉塞の予防対策
犬の腸閉塞を予防するには、飼育環境と行動を積極的に管理することが重要です。どの犬がリスクが高いかを理解することで、より効果的な予防が可能になります。
環境管理
監視は腸閉塞予防の要です。特に遊んでいるときや新しいおもちゃ・おやつを与える際は注意して見守りましょう。ゴミ箱の蓋を閉める、小さな日用品を手の届かない場所に保管する、破壊されやすい布製のおもちゃは与えないなどの対策を行ってください。
噛む本能を満たすために、耐久性の高い適切なサイズのおもちゃを与えることも有効です。おもちゃは犬の大きさに合った素材で、かけらが飲み込めるサイズに壊れないものを選び、破損が見られたらすぐに交換してください。クレートやゲートを使ってアクセスを制限することも無断での誤飲を防ぐ助けになります。
年齢・犬種ごとの注意点
若く遊び好きな犬は好奇心から誤飲リスクが高いため、監視と適切なおもちゃの選定が必要です。一方で高齢犬は異物誤飲は少ないものの、腫瘍など年齢に伴う疾患が原因で閉塞を起こすリスクが高まります。
合併症と緊急事態の見分け方
治療されない腸閉塞の潜在的な合併症を理解しておくと、いつ緊急の獣医対応が必要か判断しやすくなります。腸閉塞は治療なしでは3〜7日で命に関わる状態に進行することがあります。
すぐに獣医へ連れて行くべきサイン
犬が嘔吐、ぐったり、腹部の痛みや膨満を示す場合は直ちに救急獣医へ連絡してください。部分的な閉塞であっても急速に悪化する可能性があるため、プロの診察が必要です。排便ができずに何度も排便しようとするが出ない場合も重大なサインです。
長期的な注意点
腸閉塞の手術を受けた犬は、術後瘢痕組織の形成によって将来的に再び閉塞を起こすリスクがやや高くなります。定期的な獣医受診で消化器の健康を維持し、異常があれば早期に対処することが重要です。もし腫瘍が原因で閉塞が起きていた場合は、病理検査の結果に基づいて長期の見通しや追加治療が検討されます。
よくある質問
犬の腸閉塞はどれくらいで命に関わるようになりますか?
放置すると腸閉塞は3〜7日で致命的になる可能性があります。脱水や電解質異常が急速に進行し、腸組織が圧迫によって損傷するため、症状が出たらすぐに獣医に相談してください。
犬が何か飲み込んだ疑いがあるときはどうすればよいですか?
犬が異物を飲み込んだ疑いがある場合は、すぐにかかりつけの獣医または救急の動物病院に連絡してください。飲み込んですぐ(30分〜2時間以内)であれば、獣医で嘔吐誘発を行える場合があります。
小さな物は自然に排出されますか?
小さな物は大きさや形状、材質、犬の体格によっては自然に排出されることもありますが、勝手に通過することを前提にするのは危険です。異物誤飲が疑われる場合は必ず獣医の評価を受けてください。
腸閉塞の治療費はどれくらいですか?
治療費はケースの複雑さ、手術の有無、入院期間、動物病院の料金により数百ドルから数千ドルと幅があります。緊急手術や長期入院が必要な場合は費用が高くなる傾向があります。
誤飲しやすい犬に適したおもちゃはどのようなものですか?
噛み癖の強い犬には、適切なサイズで噛んでもかけらが飲み込めない耐久性のあるおもちゃを選んでください。破れやすいぬいぐるみ系は避け、定期的におもちゃの損耗を確認して、破損が見られたら交換しましょう。
特定の犬種が腸閉塞になりやすいですか?
どの犬種でも腸閉塞は起こり得ますが、若くて好奇心旺盛な犬種は誤飲リスクが高くなります。高齢犬は腫瘍など年齢に伴う疾患による閉塞のリスクが高まります。犬種にかかわらず個体の行動や年齢を考慮して予防を行うことが大切です。
腸閉塞と他の消化器疾患の見分け方は?
腸閉塞は一般的に「排便ができないのに嘔吐が続く」「腹部の痛みや膨満がある」「急速に容態が悪化する」といった特徴があります。他の消化器疾患でも類似の症状は出ますが、排便が完全に停止することが腸閉塞の強い示唆となります。不安な場合は速やかに獣医へ。
まとめ
犬の腸閉塞は命に関わる深刻な緊急事態です。原因・症状・治療法を理解しておくことで、異常が見られたときに素早く適切な対応ができます。早期発見と迅速な獣医の処置、術後の適切なフォローが良好な予後につながります。
また、環境管理と適切なおもちゃの選定、注意深い監視による予防が最も効果的です。腸閉塞が疑われる場合は「様子を見る」よりも早めに獣医に相談することを心がけてください。






