組織球腫(ヒスチオサイトーマ)とは
組織球腫(ヒスチオサイトーマ)は、犬に比較的よく見られる良性の皮膚腫瘤で、「ボタン腫瘍」と呼ばれることもあります。多くは単発で、赤く盛り上がったしこりとして現れ、直径は通常2~3cm(1インチ)未満です。発生部位は頭部、顔、耳、四肢に多い傾向があります。一般的には深刻な病気ではありませんが、見た目が似ている別の皮膚腫瘍もあるため、より重大な疾患と取り違えないことが重要です。確実な判断のためには、獣医師による適切な診断が欠かせません。
症状の見分け方
組織球腫の症状は比較的軽度で、最も目立つのは盛り上がった赤い皮膚のしこりで、毛が生えていないこともよくあります。飼い主さんが撫でたりグルーミングしたりする際に、初めて気づくケースが多いでしょう。通常は強い症状を起こしませんが、犬が過度に舐めたり掻いたりすると、出血、かゆみ、感染などの合併症が生じることがあります。感染が起きている場合、膿を伴う潰瘍や、しこりの周囲の腫れが見られることもあります。
原因とリスク要因
組織球腫の明確な原因はまだ解明されていませんが、免疫システムの調節異常が関与している可能性があると考えられています。また遺伝的素因を示唆する報告もあり、イングリッシュ・ブルドッグ、スコティッシュ・テリア、グレーハウンド、ボクサー、ボストン・テリア、チャイニーズ・シャー・ペイなどの犬種で比較的多いとされています。どの年齢でも起こり得ますが、特に3歳以下の若い犬で発生しやすい傾向があります。
組織球腫(ヒスチオサイトーマ)の診断
診断は、獣医師による身体検査(視診・触診)で皮膚の状態を丁寧に確認することから始まります。組織球腫が疑われる場合、細胞診(FNA:細針吸引)や生検(バイオプシー)などの検査が行われることがあります。FNAは腫瘤に細い針を刺して細胞を採取する検査で、生検は腫瘤の一部を採取して検査機関で詳しく調べます。これらは他の疾患を除外し、組織球腫であることを確認するために重要です。
治療の選択肢と、治療が必要になるケース
多くの場合、組織球腫は治療をしなくても数か月(目安として3か月以内)で自然に退縮します。免疫反応によって増殖が抑えられるためです。ただし、腫瘤がよく擦れる部位にある場合や、犬が繰り返し舐めたり掻いたりする場合は、出血や感染を防ぐために治療介入が必要になることがあります。そのようなケースでは、外用または内服の抗生物質が処方されることがあります。強い不快感がある場合や、時間が経っても退縮しない場合には、根治を目的として外科的切除が勧められることもあります。
自宅でのケア:管理と経過観察のポイント
自宅でのケアは、刺激と感染を防ぐことが中心となり、組織球腫の管理において重要な役割を果たします。腫瘤が地面や床に擦れやすい部位にある場合は、体圧を分散できるオーソペディック(低反発など)タイプのベッドを用意すると、摩擦による刺激を軽減できます。また、エリザベスカラー(リカバリーコーン)を使用して、舐める・掻く行動を防ぐことも有効です。出血や滲出(じくじく)などの変化がないか注意深く観察し、気になる点があれば早めに獣医師へ相談してください。
外科・内科的な介入
組織球腫が不快感を引き起こす場合や、自然退縮しない場合には外科的切除が選択肢になります。手術費用は、発生部位や処置の難易度によって変動します。感染が併発している場合は抗生物質治療が必要となり、その分、総費用が増えることもあります。愛犬の状況に最適な方針を決めるため、考えられる選択肢について獣医師とよく相談しましょう。
予防と長期的な管理
原因がはっきりしていないため、組織球腫を確実に予防することは難しいとされています。一方で、症状の管理や合併症の予防は可能です。定期的な観察と、異変を見つけた際の早めの受診が重要な対策となります。組織球腫自体は多くの場合無害ですが、自然に退縮するまでの間に刺激や感染を防ぐことがポイントです。
よくある質問
組織球腫に関しては、自宅でできる治療はあるか、どのくらいのスピードで大きくなるか、より深刻な腫瘍とどう見分けるか、といった質問が多く寄せられます。重要な点として、組織球腫に効果が証明された家庭療法はありません。一般的に最初の1か月で比較的速く大きくなり、直径2~3cm(1インチ)程度に達することがあります。また、皮膚のしこりを正確に診断する方法は、FNAや生検などの獣医師による検査に限られます。
まとめ
組織球腫(ヒスチオサイトーマ)は、犬でよく見られる良性の皮膚腫瘤で、多くは数か月以内に自然に退縮します。通常は大きな症状を起こしませんが、感染などの合併症を防ぐためには、正確な診断と経過観察が重要です。皮膚にいつもと違うしこりやできものを見つけたら、放置せず、獣医師に相談して適切な診断と治療計画につなげましょう。






