毛づくろいという自然な行動
猫はとてもきれい好きで、起きている時間の最大8%を毛づくろいに費やすこともあります。毛づくろいは日常のルーティンの一部で、清潔を保つだけでなく、体温調節や社会的な結びつき(コミュニケーション)といった複数の目的があります。猫は毛づくろいによって汚れや抜け毛を取り除き、被毛を清潔で良好な状態に保ちます。これは猫の生活に深く根付いた行動で、その重要性を物語っています。ただし、その毛づくろいを人に向けると、飼い主としては「なぜ?」と理由が気になるものです。
猫が人をなめる主な理由
猫が人をなめる行動には、さまざまな背景が考えられます。科学的に単一の理由が断定されているわけではありませんが、いくつかの説がこの興味深い習慣を理解する手がかりになります。
愛情表現・社会的な絆づくり
猫が人をなめる理由として、最も微笑ましいのが「愛情」です。猫は互いに毛づくろいをし合う「アログルーミング」を行い、社会的な絆を強めます。人がハグやキスなどのスキンシップで愛情を示すのと似ています。猫が飼い主をなめるのは、親和的な行動として、信頼関係や「大切に思っている」「安心させたい」という気持ちの表れであることがあります。
かまってほしい(注目を引く)
猫は観察力が高く、どんな行動をすると望む反応が返ってくるかをすぐ学びます。なめることで飼い主が反応してくれたり、撫でてくれたりする経験があると、「なめる=かまってもらえる」と関連づけて行動を繰り返すことがあります。この学習は、なめる行動が“人の注目を得る手段”として強化されていくことを示しています。
群れの一員としての“仲間認定”
なめる行為は、人を自分のグループに取り込むための方法としても考えられます。猫は匂い(フェロモン)で物や相手をマーキングし、安心感や所属感を作ります。飼い主をなめることで「自分の仲間」として印をつけ、猫同士で群れの一体感を作るのと同じように、関係性を確認している可能性があります。
子猫期の行動が残っている
早くに母猫から離れた猫は、安心を求める子猫のような行動として、なめるしぐさが出やすいことがあります。授乳期の子猫はふみふみをしたり吸ったりして落ち着きますが、これは母猫の世話を思い出させる安心行動です。早期離乳だった場合、ふみふみやゴロゴロと一緒に人をなめて安心を得ようとすることがあり、満足感や安全を感じているサインとも言えます。
味や匂いへの好奇心
飼い主の肌に付いた“気になる味や匂い”がきっかけで、猫がなめることもあります。ローション、シャンプー、あるいは汗などには、猫が興味を引かれる風味や香りが含まれることがあります。ただし注意も必要です。皮膚に塗る製品の中には、猫が舐めて摂取すると有害・中毒の原因になり得るものもあります。愛猫が舐めやすい場合は、飼い主が肌に塗るものにも配慮しましょう。
不安・ストレスの発散
なめる行動は、不安やストレスを感じている猫の“置き換え行動”として現れることがあります。一般的には自分の毛づくろいとして出やすいものの、猫によっては人に向けてなめることで気持ちを落ち着かせようとする場合があります。環境の変化や大きな音など、ストレス要因を見つけて対処することが重要で、放置すると強迫的な習慣へと進むのを防ぐ助けになります。
病気など医療的なサイン
場合によっては、過度ななめ行動が体の不調を示していることもあります。吐き気、痛み、不快感などがあると、なめる回数が増える形で現れることがあります。急に頻度が増えた、執拗になったなどの変化が見られる場合は、念のため動物病院で診察を受け、健康問題がないか確認することをおすすめします。
猫の舌が“ザラザラ”する理由
猫の舌に触れたことがある人なら、柔らかいスポンジというより“紙やすり”のように感じるのをご存じでしょう。この独特の触感は、猫の舌の表面にある、後ろ向きの小さく硬い突起(乳頭:パピラ)が何百個も並んでいるためです。これらの突起は毛づくろいに不可欠で、汚れや抜け毛を取り除き、唾液を被毛に行き渡らせることで体温調節にも役立ちます。人の敏感な皮膚では、このざらつきが不快に感じられることもあります。
猫になめられるときの安全上の注意
基本的には大きな問題になりにくいものの、猫になめさせることには一定のリスクがあります。猫の口の中には細菌がいるため、傷口をなめられると感染につながる可能性があります。免疫力が低下している方は特に注意が必要です。また、人の皮膚に塗った薬(軟膏など)が猫にとって有害な場合もあります。リスクを減らすために、顔や切り傷のある部位はなめさせないようにしましょう。
なめるのが困るときの対処法(やめさせ方)
猫になめられるのが苦手、痛い、困るという場合でも、人と猫の関係を損なわずに減らす方法があります。
行動を変えるための工夫
なめられたくないときは、服で肌を覆ったり、タオルを間に挟んだりするのが有効です。また、注意を引く目的でなめている場合は、反応しない(無視する)ことも効果的で、立ち上がってその場を離れると頻度が下がることがあります。おもちゃや知育フィーダーなどの代替行動を用意して気をそらし、なめない状態での触れ合いを褒めて強化すると、望ましい行動が定着しやすくなります。
環境を充実させる(環境エンリッチメント)
環境を充実させることは、ストレス軽減に役立ち、なめる必要性を下げる可能性があります。さまざまなおもちゃをローテーションして新鮮さを保ち、キャットタワーや棚などの上下運動できる場所(見晴らし台)を用意しましょう。定期的に一緒に遊ぶ時間を作ることも、猫の満足度を高め、落ち着いた状態につながります。
よくある質問:猫がなめることに関する悩み
猫が顔をなめるのはなぜ?
愛情表現、かまってほしい気持ち、あるいは不安や体調不良が関係していることがあります。頻度が過剰な場合は、健康確認のために獣医師へ相談してください。
なめた後に噛むのはなぜ?
なめた後に噛むのは、刺激が強すぎて興奮してしまった(過度な刺激)、不快になった、痛みがあるなどが原因で起こることがあります。医療的な問題を除外するためにも、一度動物病院で診てもらうと安心です。
まとめとして、猫が人をなめる理由は、愛情や社会的な絆づくりから、ストレス、そして医療的な問題の可能性まで多岐にわたります。理由を理解し、必要に応じて“なめすぎ”を上手にコントロールすることで、猫の健康を守りながら、より良い関係を築くことができます。






